将棋電王戦FINAL第5局 エキシビションマッチから感じたこと

電王戦FINALの第5局は、想定外のことがあり1時間足らずで終わってしまった。

当初の想定は約10時間。
おやつも昼食も詰め将棋もまだやっていなかった。

そんな状況を打破すべく、運営の機転を利かせた対応が行われた。

「△2八角を打たなかったら」ということで、永瀬六段がその局面から指し継いだのだ。

ハプニングへの対応

持ち時間は各々5時間ずつだから、まぁ10時間前後だろう、というのは妥当な読みである。

が、何が起こるかは誰にも分からない。

千日手王子の永瀬六段が、2回も3回も厭わずに千日手を選ぶかもしれないし、
プロ側が大ポカ・反則をやらかさないとも限らない。

だが、スケジュールは10時間前後は押さえている。

公式戦の将棋会館で行う対局ならいざ知らず、
電王戦はスポンサーも居ればゲストも居るし、観覧者も居る。

そうそう無碍に対局終わったんでハイ終わり!とは出来ない事情がある。

だが今回は、わずか49分で決着がついてしまった。

さぁ、運営の腕の見せ所だ。

まずは状況説明

通常の対局でもでもだが、まずは状況確認・説明を行った。
第2局で王手放置になってしまったときと同様、
騒然とする場内で、現在の局面とそのプロ側の見解を示していた。

そして「投了やむなし」という説明をしたのだ。

それを待つうちに、立会人により正式な対局結果が示され、
対局者のコメントが流れ出された。

・・・が、それぐらいで埋まるような10時間ではない。

すると、嬉しいプレゼントが用意された。

電王戦FINALの1局目から振り返ることに

とりあえず急場をしのぐために、電王戦FINALの1局目から振り返ることとなった。

1局目といえば、斎藤五段vsApery。
ノーマル四間飛車に対して斎藤五段が居飛車穴熊模様から見事に攻め勝った対局だ。

解説するは、四間飛車のスペシャリスト、藤井九段。

これは非常に嬉しい展開だ。

穴熊模様であったが、その組み方がなかなか難しいことや、
振り飛車側の囲いの細かい手順やその意味などが細かく示された。

何となくは知っていても細かい一手一手の意味まで掴むのはなかなか容易ではない。
それを細かく提示されたので、

へええええええ!!!

と思わずにはいられない内容である。

藤井九段の軽快な語り口もあり、大変盛り上がっていた。

そして、1時間たっぷり振り返ったところで、休憩となった。

森内九段の第4局 村山七段vsPonanza 解説

続いて第2局・・・のハズだったが、ここで嬉しい報告が。
阿久津八段vs永瀬六段でのエキシビションが15時から行われると告げられたのだった。

なので、それまでは森内九段のワンポイント解説、ということで第4局が取り上げられた。

ポイントはやはり、相横歩取りからの▲7七歩~▲3六飛~▲5六飛のところだった。
やはりプロから見て、相当異質な手順であることが、改めてよく分かった。

異質ではあるが、指されてみればなるほど有力だということも。

コンピュータを使うことで、人間がバッサリ捨ててきたことにもフォーカスが当たり
それがそんなに悪くなかったりする。

そういう発見があることも、電王戦の面白さだった。

後手の△8四歩に代えての△8二歩の手順が検討され、
なるほどコチラのほうがやや良かったかな、という印象を受けた。

馬を作られてジリ貧になってしまったことを考えれば、
攻められはするものの△8二歩のほうが形になっていた。

リベンジマッチがあるとすれば、この第4局なのかもしれない。

阿久津八段vs永瀬六段のエキシビションマッチ!!

さて、15時を回ったあたりでエキシビションマッチが行われた。

実際には△2八角を打ち、すぐに投了してしまったのだが、
「もしAWAKEが△2八角を打たなかったら」ということを見るために、
永瀬六段がその局面から指し継いだのだ。

指し継いだと言っても、永瀬六段は開発者席に座り、
盤に向かっていたのは電王手さんだった。
それはなかなかシュールな絵だった。

永瀬六段には感謝の言葉しか無い。
もちろん、解説をしてくれた森内九段・藤井九段にも、
聞き手の藤田女流初段・香川女流王将にも感謝する。

さて局面だが。

電王戦FINAL 阿久津vsAWAKE⑤2八角。

この△2八角を打たなかった場合、だ。

もし永瀬六段が指し継いでこの角を打ったら・・・
それはそれで面白かったのだが、
当然プロはこの角は悪手だと捉えているので、他の手を指す。

△1二香

電王戦FINAL 阿久津vs永瀬(AWAKE指し継ぎ)①△2八角に代えて△1二香

穴熊の姿勢だ。組みあがってしまえば非常に硬い。
対して先手も、もう形は決まっている。
銀冠に組むしかない。

数手後の局面だ。

電王戦FINAL 阿久津vs永瀬(AWAKE指し継ぎ)②銀冠vs穴熊の形に。

先手・後手共に十分な形に組みあがった。
これはこれで、一局であっただろう。

仕掛けは、阿久津八段が角打ちで形を乱し、
▲9五歩~▲7五歩と機敏に仕掛け、銀取りを放置して攻め込んだ。

電王戦FINAL 阿久津vs永瀬(AWAKE指し継ぎ)③阿久津八段の踏み込み

ここから先、少し永瀬六段が良くなりそうな局面もあったようだが、
阿久津八段が攻め勝ったような印象だ。

最後に、投了図を示しておこう。

電王戦FINAL 阿久津vs永瀬(AWAKE指し継ぎ)④阿久津八段の鋭い寄せ。投了図。

詳しくは、棋譜再生で見ていただければと思う。

This movie requires Flash Player 9

・・・と、簡単に振り返ったが、
この対局がなかなか、息もつかせぬいい対局だったのだ。

お互いに十分な形から阿久津八段が仕掛け、
永瀬六段が軽妙な受け(△7二角~△5二銀あたり)を見せ、
受けの中にも攻め味を見せる。

しかし、序盤の端歩の突き越しが大きく、先手玉は詰まない格好に。
そう、AWAKEに△2八角を打たせる手順の端歩が最後まで活きたのだ。

詰まないことを見切った阿久津八段が、
秒読みの中で見事に後手玉を寄せきった。

皮肉なことにも、私が見たかった手に汗握る対局は、
本戦ではなくこのエキシビションにあったのだ。

エキシビションマッチで感じたこと

電王戦は非常に面白い棋戦で、普通の対局では出てこない場面が多く見られた。
第3局では横歩取り△3三桂
第4局では相横歩取り
第5局では銀冠定跡と△2八角
練習対局では、なんといってもあの鬼殺しが登場したりもした。

そういう、プロ同士ではあまり見ない戦型を見れたのは、非常に楽しかった。

しかし本番となると、やはり負けられないプロは勝てる局面に誘導しようとすることが多かったように思う。
それが上手くいけば圧勝するし、上手くいかなければ負けてしまう・・・

プロ側がコンピュータ用に少し曲げた指し方をしているから、余計にだ。

だが最後の最後、電王戦の一部として、エキシビションでの指し継ぎではあるが人間同士の戦いが見れた。

終盤まで競り合って、手に汗握る展開でお互いの読みを比べる。
なぜかそれが、他のどの電王戦の対局よりも面白かったのだ。

電王戦は電王戦の楽しみ方があり、
人間同士は人間同士の戦いの楽しみ方がある。

人間同士の戦いのほうがドラマがある

何故かをうまく伝えることはできないが、そう感じた。

私にとっては、人間同士が指すことの素晴らしさを体感した、
そんな電王戦FINALとなった。

なんだか皮肉なものだが、それが私の本音だ。

そしてそれは、私の広めようとしている、
リアルの場で指したい!という思いをさらに確信づけるものとなった。

これを読んでくれたあなたも、将棋のイベント(4/26@池袋)にぜひ参加していただければと思う。

そういった意味でも、非常に有意義な電王戦だった。

これで終わってしまうのは寂しいが、
またどこかの機会でコンピュータ将棋を見れたらと思う。

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